「し」のもんだいにたいして
「死」の問題に対して

冒頭文

死というような哲学じみた問題は、僕らの口を出すべきものでもないし、また出したところで何らの権威にもなるまい。が、ただ死というものは人間として誰でも免るべからざる事柄であり、かつまた考えまいと思っても必ず我々の心を襲うて来る事柄であるから、哲学者でなくても、何人でも、死については何かの思想は持っているものである。しかし一般にいえば死なる現象をいくらか弄(もてあそ)ぶという嫌いもなきにしもあらずと思う

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論 二八年一三号」反省社、1913(大正2)年11月1日

底本

  • 新渡戸稲造論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年5月16日