すいばんのおうさま
水盤の王さま

冒頭文

去年(きょねん)の寒(さむ)い冬(ふゆ)のころから、今年(ことし)の春(はる)にかけて、たった一ぴきしか金魚(きんぎょ)が生(い)き残(のこ)っていませんでした。その金魚(きんぎょ)は友(とも)だちもなく、親(おや)や、兄弟(きょうだい)というものもなく、まったくの独(ひと)りぼっちで、さびしそうに水盤(すいばん)の中(なか)を泳(およ)ぎまわっていました。 「兄(にい)さん、この金魚(きん

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1921(大正10)年7月31日

底本

  • 定本小川未明童話全集 3
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年1月10日