なきんぼうのはなし
泣きんぼうの話

冒頭文

あるところに、毎日(まいにち)、よく泣(な)く子(こ)がありました。その泣(な)き様(よう)といったら、ひい、ひいといって、耳(みみ)がつんぼになりそうなばかりでなく、いまにも火(ひ)が、あたりにつきそうにさえ思(おも)われるほどです。 その近所(きんじょ)の人々(ひとびと)は、この子(こ)が泣(な)くと、 「また、泣(な)きんぼうが、泣(な)きだしたぞ。ああたまらない。」といって

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1922(大正11)年8月16日

底本

  • 定本小川未明童話全集 3
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年1月10日