はるになるぜんや
春になる前夜

冒頭文

すずめは、もう長(なが)い間(あいだ)、この花(はな)の国(くに)にすんでいましたけれど、かつて、こんなに寒(さむ)い冬(ふゆ)の晩(ばん)に出(で)あったことがありませんでした。 日(ひ)が西(にし)に沈(しず)む時分(じぶん)は、赤(あか)く空(そら)が燃(も)えるようにみえましたが、日(ひ)がまったく暮(く)れてしまうと、空(そら)の色(いろ)は、青黒(あおぐろ)くさえて、寒(さむ

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京日日新聞」1922(大正11)年1月7日~10日

底本

  • 定本小川未明童話全集 3
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年1月10日