やまのうえのきとくものはなし
山の上の木と雲の話

冒頭文

山(やま)の上(うえ)に、一本(ぽん)の木(き)が立(た)っていました。木(き)はまだこの世(よ)の中(なか)に生(う)まれてきてから、なにも見(み)たことがありません。そんなに高(たか)い山(やま)ですから、人間(にんげん)も登(のぼ)ってくることもなければ、めったに獣物(けもの)も上(のぼ)ってくるようなこともなかったのです。 ただ、毎日(まいにち)聞(き)くものは、風(かぜ)の音(

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞」1922(大正11)年3月22~25日

底本

  • 定本小川未明童話全集 3
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年1月10日