一 ある山(やま)に一本(ぽん)のかえでの木(き)がありました。もう長(なが)いことその山(やま)に生(は)えていました。春(はる)になると、美(うつく)しい若葉(わかば)を出(だ)し、秋(あき)になるとみごとに紅葉(こうよう)しました。 町(まち)から山(やま)に遊(あそ)びにゆくものは、その木(き)をほめないものはなかったのであります。 「なんといういいかえでの木(き