ちいさなあかいはな
小さな赤い花

冒頭文

おそろしいがけの中(なか)ほどの岩(いわ)かげに、とこなつの花(はな)がぱっちりと、かわいらしい瞳(ひとみ)のように咲(さ)きはじめました。 花(はな)は、はじめてあたりを見(み)て驚(おどろ)いたのであります。なぜなら、目(め)の前(まえ)には、大海原(おおうなばら)が開(ひら)けていて、すぐはるか下(した)には、波(なみ)が、打(う)ち寄(よ)せて、白(しろ)く砕(くだ)けていたから

文字遣い

新字新仮名

初出

「良友」1921(大正10)年4月

底本

  • 定本小川未明童話全集 2
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年12月10日