みなとについたくろんぼ
港に着いた黒んぼ

冒頭文

やっと、十(とお)ばかりになったかと思(おも)われるほどの、男(おとこ)の子(こ)が笛(ふえ)を吹(ふ)いています。その笛(ふえ)は、ちょうど秋風(あきかぜ)が、枯(か)れた木(き)の葉(は)を鳴(な)らすように、哀(あわ)れな音(おと)をたてるかと思(おも)うと、春(はる)のうららかな日(ひ)に、緑(みどり)の色(いろ)の美(うつく)しい、森(もり)の中(なか)でなく小鳥(ことり)の声(こえ)の

文字遣い

新字新仮名

初出

「童話」1921(大正10)年6月

底本

  • 定本小川未明童話全集 2
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年12月10日