はるがくるまえ
春がくる前

冒頭文

さびしい野原(のはら)の中(なか)に一本(ぽん)の木立(こだち)がありました。見渡(みわた)すかぎり、あたりは、まだ一面(めん)に真(ま)っ白(しろ)に雪(ゆき)が積(つ)もっていました。そして、寒(さむ)い風(かぜ)が、葉(は)の落(お)ちつくしてしまった枝(えだ)を吹(ふ)くのよりほかに、聞(き)こえるものもなかったのです。 木(き)は、こうして毎日(まいにち)、長(なが)い寒(さむ

文字遣い

新字新仮名

初出

「まなびの友」1921(大正10)年3月

底本

  • 定本小川未明童話全集 1
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日