いぬとひととはな
犬と人と花

冒頭文

ある町(まち)はずれのさびしい寺(てら)に、和尚(おしょう)さまと一ぴきの大(おお)きな赤犬(あかいぬ)とが住(す)んでいました。そのほかには、だれもいなかったのであります。 和尚(おしょう)さまは、毎日(まいにち)御堂(おどう)にいってお経(きょう)を上(あ)げられていました。昼(ひる)も、夜(よる)も、あたりは火(ひ)の消(き)えたように寂然(ひっそり)として静(しず)かでありました

文字遣い

新字新仮名

初出

「黒煙」1919(大正8)年5月

底本

  • 定本小川未明童話全集 1
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日