くろいはたものがたり
黒い旗物語

冒頭文

一 どこからともなく、爺(じい)と子供(こども)の二人(ふたり)の乞食(こじき)が、ある北(きた)の方(ほう)の港(みなと)の町(まち)に入(はい)ってきました。 もう、ころは秋(あき)の末(すえ)で、日(ひ)にまし気候(きこう)が寒(さむ)くなって、太陽(たいよう)は南(みなみ)へと遠(とお)ざかって、照(て)らす光(ひかり)が弱(よわ)くなった時分(じぶん)であります。毎日

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本少年」1915(大正4)年4月

底本

  • 定本小川未明童話全集 1
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日