ウィインで頗(すこぶ)る勢力のある一大銀行に、先(ま)ずいてもいなくても差支(さしつかえ)のない小役人があった。名をチルナウエルと云(い)う小男である。いてもいなくても好(い)いにしても、兎(と)に角(かく)あの大銀行の役をしているだけでも名誉には違いない。 この都に大勢いる銀行員と云うものの中で、この男には何の特色もない。風采(ふうさい)はかなりで、極力身なりに気を附(つ)けている。そして文