せかいまんゆう
世界漫遊

冒頭文

ウィインで頗(すこぶ)る勢力のある一大銀行に、先(ま)ずいてもいなくても差支(さしつかえ)のない小役人があった。名をチルナウエルと云(い)う小男である。いてもいなくても好(い)いにしても、兎(と)に角(かく)あの大銀行の役をしているだけでも名誉には違いない。 この都に大勢いる銀行員と云うものの中で、この男には何の特色もない。風采(ふうさい)はかなりで、極力身なりに気を附(つ)けている。そ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 於母影 冬の王 森鴎外全集12
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日