おんなのけっとう
女の決闘

冒頭文

古来例のない、非常な、この出来事には、左の通りの短い行掛りがある。 ロシアの医科大学の女学生が、ある晩の事、何の学科やらの、高尚な講義を聞いて、下宿へ帰って見ると、卓の上にこんな手紙があった。宛名も何も書いてない。「あなたの御関係なすっておいでになる男の事を、ある偶然の機会で承知しました。その手続きはどうでも好い事だから、申しません。わたくしはその男の妻だと、只今まで思っていた女です。わ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 於母影 冬の王 森鴎外全集12
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日