ちじんとしと
痴人と死と

冒頭文

為事室(しごとべや)。建築はアンピイル式。背景の右と左とに大いなる窓あり。真中(まんなか)に硝子(ガラス)の扉ありてバルコンに出(い)づる口となりおる。バルコンよりは木の階段にて庭に降るるようなりおる。左には広き開(ひら)き戸(ど)あり。右にも同じ戸ありて寝間(ねま)に通じ、この分(ぶん)は緑の天鵞絨(びろうど)の垂布(たれぎぬ)にて覆いあり。窓にそいて左の方(かた)に為事机あり。その手前に肱突(

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 於母影 冬の王 森鴎外全集12
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日