かいことてんぼう
回顧と展望

冒頭文

回顧は老人の追想談になるのが普通で,それは通例不確かなものであることが世間の定評であるようであります.それは当然不確かになるべきものだと考えられます.遭遇というか閲歴というか,つまり現在の事だって本当には分らない.それは当然主観的である.しかも過去は一たび去って永久に消滅してしまう.そうしてそれを回想する主観そのものも年とともに易(かわ)って行くのであるから,まあ大して当てになるものではない.これ

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1941(昭和16)年

底本

  • 近世数学史談
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年8月18日