ソクラテス
ソクラテス

冒頭文

一 ソクラテスに依りて懐疑を解く 私は十五、六歳の学生時代から、世の中のことに就て思い悩んでいた。たとえば、自分では正しいと思ってすることも、相手の気に障って、予想外の怒りや恨(うら)みを受けることもあるために、これからは、一体如何(いか)なる心掛けで人生を送ったら好(い)いものかということに考え及ぶと、疑惑が百出して、何時(いつ)も何時(いつ)もその解決に苦(くるし)んだ。然(しか)る

文字遣い

新字新仮名

初出

「中学世界 一四巻一号」博文館、1911(明治44)年1月1日

底本

  • 新渡戸稲造論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年5月16日