みんぞくゆうせいせつのきけん
民族優勢説の危険

冒頭文

右に述べた歴史の長短と聯想されて起る問題は大和(やまと)民族の立場である。我々が新聞や演説に常に天孫民族ということを聞くは、あたかも排外的米人がアングロ・サクソン民族とかノールディックとかを振りまわすように、耳ざわりとなるほど多いのである。果して大和民族という純粋な民族があったかすら未だ判然せぬ。かく呼(よ)び做(な)す如き民族は政治上の目的のために作った一種の仮装談(かそうだん)であるならば、そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「東西相触れて」1928(昭和3)年10月29日

底本

  • 新渡戸稲造論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年5月16日