わすれがたきことども
忘れ難きことども

冒頭文

先生のことを思ひますと、唯私は悲しくなります。先生は、随分苦労をなさいました。ほつと呼吸(いき)をつく間もない位に、殆んど苦労のし通しでした。それを残らず傍にゐて見知つてゐるだけに、皆私には忘れられないことばかりです。 先生は、ずつと以前から、私達一座を率ゐて西洋へ行つて見たいと云ふお考へを持つてゐらつしやいました。はなは、大連から露西亜(ろしあ)へ、露西亜から亜米利加(あめりか)の方へ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「演芸画報」1918(大正7)年12月

底本

  • 「弔辞」集成 鎮魂の賦
  • 青銅社
  • 1986(昭和61)年10月15日