なんぼく
南北

冒頭文

一 村では秋の収穫時が済んだ。夏から延ばされていた消防慰労会が、寺の本堂で催された。漸(ようや)く一座に酒が廻った。 その時、突然一枚の唐紙(からかみ)が激しい音を立てて、内側へ倒れて来た。それと同時に、秋三と勘次の塊りは組み合ったまま本堂の中へ転り込んだ。一座の者は膝を立てた。 暫くすると、人々に腕を持たれた秋三は勘次を睥(にら)み乍ら、裸体の肩口を押し出して、

文字遣い

新字新仮名

初出

「人間」1921(大正10)年2月

底本

  • 日本文學全集 29 横光利一集
  • 新潮社
  • 1961(昭和36)年2月20日