とうざいあいふれて
東西相触れて

冒頭文

あるいは東、あるいは西といえば如何(いか)にも両者の間に懸隔(けんかく)あるように聞(きこ)ゆる。文章家はかくの如き文字を用いて相容(あいい)れざる差(さ)を示す。かの有名な詩篇(しへん)の内にも西と東の隔(へだ)たる如く云々(うんぬん)とある。この言に限らず総(すべ)ての対照的文字は濫用(らんよう)され易(やす)い。近頃世間に用いらるる左傾右傾の如きもまた同じである。しかしこれらは何れも実在する

文字遣い

新字新仮名

初出

「東西相触れて」1928(昭和3)年10月29日

底本

  • 新渡戸稲造論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年5月16日