こい

冒頭文

大石田に来てから、最上川に大きな鯉が居るといふ話を一再ならず聞いた。今は大石田町に編入されたが、今宿(いましゆく)といふ部落の出はづれで、トンネルのあるところの山を切開いた新道、つまり従来ヘグリと云つてゐた断崖に沿うて流れる最上川の底は堅い巌石の層で、その地方の人のいふバンから出来て居る。平たい巌のことをバンと云ふらしいが、そのバンが深い洞窟となつてゐる箇処があつて、其処が大きな鯉群の隠場処だとい

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆32 魚
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年6月25日