一 明治も改元して左程(さほど)しばらく経たぬ頃、魚河岸(うおがし)に白魚と鮎(あゆ)を専門に商う小笹屋という店があった。店と言っても家構えがあるわけでなく鮪(まぐろ)や鮫(さめ)を売る問屋の端の板羽目の前を借りて庇(ひさし)を差出し、其(そ)の下にほんの取引きに必要なだけの見本を並べるのであった。それだからと言って商いが少ないと言うわけではない。 なにしろ東京中の一流の料理屋が使う白魚と鮎に