えつねん
越年

冒頭文

年末のボーナスを受取って加奈江が社から帰ろうとしたときであった。気分の弾(はず)んだ男の社員達がいつもより騒々しくビルディングの四階にある社から駆け降りて行った後、加奈江は同僚の女事務員二人と服を着かえて廊下に出た。すると廊下に男の社員が一人だけ残ってぶらぶらしているのがこの際妙に不審に思えた。しかも加奈江が二、三歩階段に近づいたとき、その社員は加奈江の前に駆けて来て、いきなり彼女の左の頬に平手打

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 岡本かの子全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年8月24日