ほご
反古

冒頭文

これは私が十七の時の話です。 私の伯母の内に小間使をしてゐたお時といふ十七になる女が、二月ばかり私の内へ手傳に來てゐたことがありました。何でも内の小間使が、親が死んだかどうかして、暫く國へ歸つてゐた間の事です。 お時は鼻の少し大きな女でしたが、少し下つた眼尻に何とも言へぬ愛嬌があつて、年頃の男の氣を引くにはそれでもう十分でした。それに色のくッきりと白いのと、聲の可愛いのと、態度

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新思潮 第二次第一號」」鳴皐書院、1910(明治43)年9月

底本

  • 發禁作品集
  • 八雲書店
  • 1948(昭和23)年9月1日