一 四谷見付(よつやみつけ)から築地両国行(つきじりょうごくゆき)の電車に乗った。別に何処(どこ)へ行くという当(あて)もない。船でも車でも、動いているものに乗って、身体(からだ)を揺(ゆす)られるのが、自分には一種の快感を起させるからで。これは紐育(ニューヨーク)の高架鉄道、巴里(パリー)の乗合馬車の屋根裏、セエヌの河船(かわぶね)なぞで、何時(いつ)とはなしに妙な習慣になってしまった。