うきふね
浮舟

冒頭文

一 「浪花江(なにわえ)の片葉(かたは)の蘆(あし)の結ぼれかかり——よいやさ。」 と蹌踉(よろり)として、 「これわいな。……いや、どっこいしょ。」 脱いで提げたる道中笠、一寸(ちょっと)左手に持換えて、紺の風呂敷、桐油包(とうゆづつみ)、振分けの荷を両方、蝙蝠(こうもり)の憑物めかいて、振落しそうに掛けた肩を、自棄(やけ)に前に突いて最一(もひと)つ蹌踉(よろ)ける。 「……解けてほぐれて

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1916(大正5)年4月号

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2009(平成21)年7月10日