しょもつのりんり
書物の倫理

冒頭文

洋書では滅多にないことだが、日本のこの頃の本はたいてい箱入になっている。これは発送、返品、その他の関係の必要から来ていることだろうが、我々にはあまり有難くないことのように思う。だいいち本屋の新刊棚の前に立ったとき、そのためにたいへん単調な感じを受ける。どの本もどの本も皆一様に感じられる。どれかを開けて内容を調べてみようとしても、箱があるのは不便だ。開いて見て元の箱に納めようとすれば、本には薄い包紙

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京堂月報」1933(昭和8)年4月

底本

  • 読書と人生
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1974(昭和49)年10月30日