すみだがわ
すみだ川

冒頭文

一 俳諧師(はいかいし)松風庵蘿月(しようふうあんらげつ)は今戸(いまど)で常磐津(ときはづ)の師匠(しゝやう)をしてゐる実(じつ)の妹(いもうと)をば今年は盂蘭盆(うらぼん)にもたづねずにしまつたので毎日その事のみ気にしてゐる。然(しか)し日盛(ひざか)りの暑さにはさすがに家(うち)を出かねて夕方(ゆふかた)になるのを待つ。夕方(ゆふかた)になると竹垣(たけがき)に朝顔のからんだ勝手口

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説 第14年第12巻」1909(明治42)年12月

底本

  • 明治の文学 第25巻 永井荷風・谷崎潤一郎
  • 筑摩書房
  • 2001(平成13)年11月20日