きんぎょ
金魚

冒頭文

町に金魚を賣る五月の、かうした青い長雨(ながあめ)の頃になると、しみ〴〵おふさのことが思ひ出される。今日も外にはしと〳〵と蜘蛛の糸のやうな小雨が降る。金魚の色ばかりを思ひ浮べても物淋しい。おふさを思へばうら悲しい。 二人はあの青山の裏町の、下二た間(ま)と二階一と間だけの小さい家(うち)に住んでゐた。 はじめて世に出す作にかゝつてゐた私は毎晩夜學へ講義に行く外は、晝はいちんち二

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鈴木三重吉全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1938(昭和13)年5月15日