きゅうりのたね
胡瓜の種

冒頭文

小さいときから自分を育てゝ來たお千(せん)は、下女と祖母とを伴れて、車に乘つて一足先に移つて出た。 自分は宿屋の拂ひをして、一二の用事に∱Eつてあとから行つた。荷車に托した行李と蒲團とが已に運ばれて、上り口に積み上げてあつた。見すぼらしいがた〴〵の格子戸を這入つて靴を解く。お千は下女に指圖をして、がさごそそこらを拭き∱Eつてゐた。 「どうだ。掃除は片づいたか?」と言ひつゝ上ると、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鈴木三重吉全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1938(昭和13)年5月15日