おんなのこ
女の子

冒頭文

自分が毎日物を書く一と間の前には、老い耄(ほう)けたやうな、がた〴〵の黒板塀が限られてゐる。左の建物の壁の根に、三つ股になつた、ひよろ〳〵の低い無花果の木が、上の方に僅かの小さい若芽を附けて、置き忘れられたやうに乏しく踞(こゞ)まつてゐる外には、何の植(うわ)つてゐるものもない。 いかにも裏町らしい、黒ずんだ土の上には、板塀の下から潜り出たどくだみの四五本が、ちよつぴりと青いものになつて

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鈴木三重吉全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1938(昭和13)年5月15日