あかいとり
赤い鳥

冒頭文

冷吉は自分には考へる女がなかつたものだから、讀んだ物の中の、赤い鳥を遁がして出て行く女を、自分の女にして考へてゐた。そのために自分に女のないのが餘計に暗愁を増すやうな事もあつたけれど、それでも外に何もないのだから、やつぱりその女を考へずにはゐられなかつた。 それは表紙が好きだから買つて來た、譯したものを集めた、或本に出てゐた小説であつた。冷吉はいつも、その女が家から遁げて出かけて、窓の鳥

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鈴木三重吉全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1938(昭和13)年5月15日