ようかん
羊羹

冒頭文

新太郎はもみぢといふ銀座裏の小料理屋に雇はれて料理方の見習をしてゐる中、徴兵にとられ二年たつて歸つて來た。然し統制後の世の中一帶、銀座界隈(かいわい)の景況はすつかり變つてゐた。 仕込にする物が足りないため、東京中の飮食店で毎日滯りなく客を迎へることのできる家は一軒もない。もみぢでは表向休業といふ札を下げ、ない〳〵で顏馴染のお客とその紹介で來る人だけを迎へることにしてゐたが、それでも十日

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 葛飾こよみ
  • 毎日新聞社
  • 1956(昭和31)年8月25日