さんぶんし
散文詩

冒頭文

曠野 路に迷つたのだ! と氣のついた時は、此曠野(あらの)に踏込んでから、もう彼是十哩も歩いてゐた。朝に旅籠屋を立つてから七八哩の間は潦(みづたまり)に馬の足痕の新しい路を、森から野、野から森、二三度人にも邂逅(でつくわ)した。とある森の中で、人のゐない一軒家も見た。その路から此路へ、何時、何處から迷込んだのか解らない。瞬きをしてゐる間に、誰かが自分を掻浚つて來て恁麼(こんな)曠野

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 啄木全集 第二卷
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年4月13日