ごんすけのこい
権助の恋

冒頭文

夜半にふと眼をさますと縁側の処でガサガサガタと音がするから、飼犬のブチが眠られないで箱の中で騒いで居るのであろうと思うて見たが、どうもそうでない。音の工合が犬ばかりでもないようだ。きっと曲者(くせもの)が忍びこんだのに違いない。犬に吠えられないように握飯でも喰わして居るのだろう、一つ驚かしてやろうと、考えて居る内、忽ちすさまじい音がして、犬は死物狂いの声を出して逃出したようであった。「誰だ」ト内か

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日