さけ

冒頭文

○一つ橋外の学校の寄宿舎に居る時に、明日は三角術の試験だというので、ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。困って居ると友達が酒飲みに行かんかというから、直に一処(いっしょ)に飛び出した。いつも行く神保町の洋酒屋へ往って、ラッキョを肴(さかな)で正宗(まさむね)を飲んだ。自分は五勺(しゃく)飲むのがきまりであるが、この日は一合(いちごう)傾けた。この勢

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第二巻第九号」1899(明治32)年6月20日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日