はか

冒頭文

○こう生きて居たからとて面白い事もないから、ちょっと死んで来られるなら一年間位地獄漫遊と出かけて、一周忌の祭の真中へヒョコと帰って来て地獄土産の演説なぞは甚だしゃれてる訳だが、しかし死にッきりの引導(いんどう)渡されッきりでは余り有難くないね。けれど有難くないの何のと贅沢(ぜいたく)をいって見たところで、諸行無常老少不定というので鬼が火の車引いて迎えに来りゃ今夜にも是非とも死ななければならないヨ。

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第二巻第十二号」1899(明治32)年9月10日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日