わかすぎさいばんちょう
若杉裁判長

冒頭文

△△△地方裁判所の、刑事部の裁判長をしている、判事若杉浩三(わかすぎこうぞう)氏は若い時、かなり敬虔(けいけん)なクリスチャンでありました。 が、普通クリスチャンの青年が、社会に出てしまうと、まるきり物忘れをしたように、けろりとクリスチャンでなくなるように、若杉さんも、いつの間にか、青年時代の信仰をどこかへ置き忘れていました。それは、大学時代に作ったたくさんのノートの中へ置き忘れたのか、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 菊池寛 短篇と戯曲
  • 文芸春秋
  • 1988(昭和63)年3月25日