はつゆめ
初夢

冒頭文

(座敷の真中に高脚の雑煮膳が三つ四つ据えてある。自分は袴羽織で上座の膳に着く。)「こんなに揃って雑煮を食うのは何年振りですかなア、実に愉快だ、ハハー松山流白味噌汁の雑煮ですな。旨(うま)い、実に旨い、雑煮がこんなに旨かったことは今までない。も一つ食いましょう。」「羽織の紋がちっと大き過ぎたようじゃなア。」「何に大きいことはない。五つ紋の羽織なんか始めて着たのだ。紋の大きいのは結構だ。(自分は嬉しい

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第四巻第四号」1901(明治34)年1月31日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日