めしまつま
飯待つ間

冒頭文

余は昔から朝飯を喰わぬ事にきめて居る故(ゆえ)病人ながらも腹がへって昼飯を待ちかねるのは毎日の事である。今日ははや午砲が鳴ったのにまだ飯が出来ぬ。枕もとには本も硯(すずり)も何も出て居らぬ。新聞の一枚も残って居らぬ。仕方がないから蒲団(ふとん)に頬杖(ほおづえ)ついたままぼんやりとして庭をながめて居る。 おとといの野分(のわき)のなごりか空は曇って居る。十本ばかり並んだ雞頭(けいとう)は

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第三巻第一号」1899(明治32)年10月10日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日