よんひゃくねんごのとうきょう
四百年後の東京

冒頭文

神田川 都会の中央、絶壁屏風の如く、緑滴(したた)り水流れ、気清く神静かに、騒人は月をここに賞し、兇漢は罪をここに蔵す、これを現今の御茶の水の光景とす。紅塵万丈(こうじんばんじょう)の中この一小閑地を残して荒涼たる山間の趣を留む、夫(か)の錙銖(ししゅ)を争ふ文明開化なる者に疑ひなき能はざるなり。不折(ふせつ)が画く所、未来の神田川、また余輩と感を同じうせし者あるに因るか。図中、三重に橋

文字遣い

新字旧仮名

初出

「日本」1899(明治32)年1月1日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日