しゃじょうのしゅんこう
車上の春光

冒頭文

四月廿九日の空は青々と晴れ渡って、自分のような病人は寝て居る足のさきに微寒を感ずるほどであった。格堂(かくどう)が来て左千夫の話をしたので、ふと思いついて左千夫を訪おうと決心した。左千夫の家は本所(ほんじょ)の茅場町(かやばちょう)にあるので牡丹(ぼたん)の頃には是非来いといわれて居たから今日不意に出て驚かしてやるつもりなのだ。格堂はさきへ往て左千夫の外出を止める役になった。 昼餉(ひる

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第三巻第十号」1900(明治33)年7月30日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日