びょうしょうくご
病牀苦語

冒頭文

○この頃は痛さで身動きも出来ず煩悶の余り精神も常に穏やかならんので、毎日二、三服の痲痺剤を飲んで、それでようよう暫時の痲痺的愉快を取って居るような次第である。考え事などは少しも出来ず、新聞をよんでも頭脳が乱れて来るという始末で、書くことは勿論しゃべることさえ順序が立たんのである。それでもだまって居るのは尚更(なおさら)苦しくて日の暮しようがないので、きょうは少ししゃべって見ようと思いついた。例の秩

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第五巻第七号」1902(明治35)年4月20日、「ホトトギス 第五巻第八号」1902(明治35)年5月20日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日