つちだるまをこぼつじ
土達磨を毀つ辞

冒頭文

汝もといづくの辺土の山の土くれぞ。急須(きゅうす)となりて茶人が長き夜のつれづれを慰むるにもあらねば、徳利となりて林間に紅葉を焚(た)くの風流も知らず。さりとて来山が腹に乗りて物喰はぬ妻と可愛がられたる女人形のたぐひにもあらず。過去の因業(いんごう)いまだ尽きず、拙(つたな)きすゑものつくりにこねられてかかる見にくき姿とはなりける。むつかしき頬(ほお)ふくらしてひたすらに世を睨(にら)みつけたる愛

文字遣い

新字旧仮名

初出

「ホトトギス 第二巻第一号」1898(明治31)年10月10日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日