くあわせのつき
句合の月

冒頭文

句合(くあわせ)の題がまわって来た。先ず一番に月という題がある。凡そ四季の題で月というほど広い漠然とした題はない。花や雪の比でない。今夜は少し熱があるかして苦しいようだから、横に寝て句合の句を作ろうと思うて蒲団(ふとん)を被(かぶ)って験温器を脇に挟(はさ)みながら月の句を考えはじめた。何にしろ相手があるのだから責任が重いように思われて張合があった。判者が外の人であったら、初から、かぐや姫とつれだ

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第二巻第二号」1898(明治31)年11月10日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日