あかり |
| 灯火 |
冒頭文
飯島(いひじま)夫人——栄子(えいこ)は一切の事を放擲(はうてき)する思をした後(あと)で、子供を東京の家の方に残し、年をとつた女中のお鶴(つる)一人連れて、漸く目的(めあて)とする療養地に着いた。箱根へ、熱海へと言つて夫や子供と一緒によく出掛けて行つた時には、唯無心に見て通り過ぎた相模(さがみ)の海岸にある小さな停車場(ていしやば)、そこへ夫人はお鶴と二人ぎり汽車から降りた。 夫人はまだ若か
文字遣い
新字旧仮名
初出
「太陽」1912(明治45)年6月
底本
- 筑摩全集類聚 島崎藤村全集第五巻
- 筑摩書房
- 1981(昭和56)年5月20日