しのとこ |
| 死の床 |
冒頭文
「柿田(かきた)さん、なんでもかんでも貴方(あなた)に被入(いらつ)しつて頂くやうに、私が行つて院長さんに御願ひして来て進(あ)げる——左様(さう)言つて、引受けて来たんですよ。」 流行の服装をした女の裁縫師が、あの私立病院の応接間で、日頃好きな看護婦の手を執らないばかりにして言つた。 柿田は若い看護婦らしい手を揉(も)み乍ら、 「多分行かれませう。丁度今、私も手が空(あ)いたばかし……先刻
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文章世界」1912(明治45)年3月
底本
- 筑摩全集類聚 島崎藤村全集第五巻
- 筑摩書房
- 1981(昭和56)年5月20日