れんげつやき
蓮月焼

冒頭文

蓮月尼(れんげつに)の陶器には、にせものが多い。にせものとほんものを見わけるのは、急須(きゅうす)なり茶わんなりに書きこんである彼女の自作の歌の文字の味で、判断するのである。文字ばかりはどんなにたくみに真似ても、まねきれるものでないといわれるが、ことに蓮月尼の陶器のばあいのように、素焼の肌につまようじかなにかで書き流したあとのうつくしさは、たとえようのないニュアンスをもってにせものの追随をゆるさな

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 黒船前後・志士と経済他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1981(昭和56)年7月16日