せいばい
せいばい

冒頭文

徳川時代の司法権は各藩がもっている。——したがって刑法にも、藩ごとの掟(おきて)がある。だが、死刑だけは、幕府のゆるしがないと執行できなかった。その死刑にも階級があった。会津(あいづ)藩の掟でみると、いちばん軽い死刑は「牢内打首(ろうないうちくび)」とよばれた。牢内の刑場で首を斬る。庶民には見せないのである。エリザベス朝のイギリスでも、ロンドン塔の中庭で首を斬られるのは、死罪にたいする軽い扱いであ

文字遣い

新字新仮名

初出

「微視の史学」理論社、1953(昭和28)年4月

底本

  • 黒船前後・志士と経済他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1981(昭和56)年7月16日