むしぼし
虫干

冒頭文

毎年(まいねん)一度の虫干(むしぼし)の日ほど、なつかしいものはない。 家中(うちぢゆう)で一番広い客座敷の縁先には、亡(なくな)つた人達の小袖(こそで)や、年寄つた母上の若い時分の長襦袢などが、幾枚となくつり下げられ、其のかげになつて薄暗く妙に涼しい座敷の畳の上には歩く隙間もないほどに、古い蔵書や書画帖などが並べられる。 色のさめた古い衣裳の仕立方(したてかた)と、紋の大きさ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆36 読
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年10月25日